砂糖を20gから12gに減らして気づいた「普通の甘さ」って何だろう?|南米の食品規制チャレンジ研究室

砂糖を減らしていたら、「普通の甘さ」って何だろうと思い始めました


~南米の食品規制チャレンジ研究室~


今回も「南米の食品規制チャレンジ研究室」です。

この研究室を始めてから、オートミールを使ったクッキーを何度か作ってきました。

最初の目的は、「南米の食品規制に引っかからないクッキーって、どんなものなんだろう?」

というものでした。

そこで砂糖の量を変えながら作ってきたのですが、5回目まで来たところで、規制とは少し違うことが気になり始めたんです。

それがこれ

「そもそも、砂糖ってこんなに必要なのかな?」

 


ということでした。

今回は、そこまでの5回を振り返ってみます。

砂糖を20g、20g、15g、12g、12gと変えてみました

1回目
オートミール 100g

米粉 大さじ3

ココアパウダー 大さじ1

水 大さじ3.5

ザラメ 10g

てんさい糖 10g

油 大さじ2

砂糖は合計20g。

焼く前は217g。

180℃で24分焼いて、焼き上がりは170gでした。

 

 


2回目
オートミール 100g

米粉 大さじ3

白すりごま 大さじ2

ザラメ 20g

豆乳 大さじ4

油 大さじ2

塩 2g

砂糖は今回も20gです。

焼く前は235g。

180℃で24分焼いて、焼き上がりは173gでした。

 


3回目
今度は砂糖を少し減らしました。

オートミール 100g

米粉 大さじ3

白すりごま 大さじ2

ザラメ 15g

塩 2g

豆乳 大さじ4

油 大さじ2

砂糖は15g。

焼く前は237g。

180℃で24分焼いて、焼き上がりは179gでした。

 


4回目
さらに砂糖を減らしました。

オートミール 100g

米粉 大さじ3

黒すりごま 大さじ2

ザラメ 12g

水 大さじ4

油 大さじ2

塩 2g

砂糖は12gです。

焼く前は238g。

180℃で24分焼いて、焼き上がりは160gでした。

 


5回目
そして5回目。

砂糖は12gのままにしました。

その代わり、今度は塩を2gから1gに減らしてみました。

オートミール 100g

米粉 大さじ3

水 大さじ3.5

ザラメ 12g

塩 1g

米油 大さじ2

カモミール 0.15g

オールスパイス 0.15g

180℃で24分。

焼き上がりは160gでした。

今回はカモミールとオールスパイスも少し加えています。

 



こうして5回を並べると、

20g → 20g → 15g → 12g → 12g

と砂糖を減らしてきました。

そして5回目では、砂糖だけではなく塩も2gから1gへ減らしました。

実はこれが、南米の食品規制を考えるうえで結構大事な変化になりました。

「何g入れたか」だけでは比較できません
この実験を始めてから気づいたことがあります。

それは、焼き上がった後の重さを量らないと、各国の基準ときちんと比較できないということです。

例えば砂糖を20g入れても、出来上がった食品が200gなら100g当たり10gです。

ところが焼いて水分が抜け、150gになれば、

20÷150×100=約13.3g。

同じ砂糖20gでも、焼き上がった食品の重さによって100g当たりの数字は変わります。

そこで今回は、焼き上がり重量を使って計算します。

100g当たりにすると、こうなりました
実験 砂糖 焼き上がり 添加した砂糖/100g
1回目 20g 170g 約11.8g
2回目 20g 173g 約11.6g
3回目 15g 179g 約8.4g
4回目 12g 160g 7.5g
5回目 12g 160g 7.5g
こうして見ると、20gから12gに減らした違いがかなりはっきりします。

1回目は100g当たり約11.8g。

5回目では7.5g。

では、この5種類を南米各国で販売する商品だと仮定したら、どうなるのでしょうか。

南米各国の基準に当てはめてみます
ここから少しややこしくなります。

 



というのも、国によって警告表示の判定方法が違うからです。

総糖類を100g当たりで見る国。

添加糖を100g当たりで見る国。

糖類から来るエネルギーが、食品全体のエネルギーの何%を占めるのかを見る国。

同じクッキーでも、国によって判定方法そのものが違います。

そのため、今回は使用した材料と焼き上がり重量から計算できる範囲で比較します。

実際の商品として販売する場合には、オートミールや米粉など、それぞれの商品に表示されている栄養成分を使った正式な計算が必要です。

今回はあくまで、「このクッキーを各国の制度に当てはめてみたらどうなるだろう?」という研究室での参考判定です。

 


チリではどうなる?


チリでは、砂糖などを加えた固形食品について、100g当たりの総糖類10g、ナトリウム400mgなどが警告表示を判断する基準になります。

1回目は、加えた砂糖だけで約11.8g/100g。

2回目も約11.6g/100g。

この時点ですでに10gを超えています。

そのため1、2回目は糖類の警告対象になると考えられます。

ところが、

3回目 約8.4g
4回目 7.5g
5回目 7.5g

まで減ってきました。

ただし、これはあくまで「加えた砂糖」だけの数字です。

チリは総糖類を見るため、オートミールや米粉、豆乳など、材料にもともと含まれる糖類も加える必要があります。

ですから3~5回目は、砂糖だけなら10gを下回った。ただし正式判定には総糖類の計算が必要

というところまで言えます。



ところが、今度は塩が出てきました
ここで面白い問題が出てきます。

2~4回目には塩を2g入れています。

食塩2gに含まれるナトリウムは、およそ790mgです。

例えば4回目は焼き上がり160gですから、

790÷160×100

で、食塩だけからでも100g当たり約494mgのナトリウムになります。

チリの400mg/100gという基準を超えてしまいます。

つまり、、、、

砂糖を減らしたら、今度は塩で引っかかる。

「よし、砂糖は減ったぞ」

と思ったら、別のところから出てきました(笑)。

 



そこで5回目では、塩を2gから1gに減らしました。

食塩1gなら、ナトリウムはおよそ393mg。

焼き上がり160gなので、食塩由来だけなら100g当たり約246mgです。

かなり下がりました。

もちろんオートミールや米粉などにもナトリウムは含まれていますので、正式な判定には全部を合計する必要があります。

それでも、砂糖だけではなく塩も減らしてみる

 


という次の実験につながったわけです。

 

 


ブラジルでは?


ブラジルはチリとは違います。

固形食品では、

添加糖15g以上/100g、
飽和脂肪6g以上/100g、
ナトリウム600mg以上/100g

が前面警告表示の基準です。

今回の添加した砂糖は、

1回目 約11.8g
2回目 約11.6g
3回目 約8.4g
4回目 7.5g
5回目 7.5g

です。

つまり、添加糖だけを見ると5回とも15g/100gを下回っています。

ブラジルでは5回とも、添加糖については警告基準内になります。

同じクッキーなのに、チリとブラジルでは結果が違う。

このあたりも、各国の制度を比べていて面白いところです。

メキシコ、コロンビア、アルゼンチンでは?
ここはさらに考え方が変わります。

単純に、「砂糖が100g当たり何gあるか」

だけでは判断できません。

糖類や添加糖から来るエネルギーが、食品全体のエネルギーのどのくらいを占めているか、といった栄養プロファイルを使って判断します。

そのため、この3か国については、材料ごとの正確なエネルギー値まで入れて計算しないと断定できません。

ただ、今回の実験では、20g → 15g → 12gと砂糖を減らしています。

当然、食品全体に占める砂糖由来のエネルギーの割合も下がっていきます。

つまり砂糖を数g減らしただけに見えても、国によっては警告表示が付くか付かないかの境目をまたぐ可能性があるわけです。

 

5回並べると、見えてきたものがあります
砂糖についてだけ整理すると、こんな流れです。

実験 砂糖 添加した砂糖/100g
1回目 20g 約11.8g
2回目 20g 約11.6g
3回目 15g 約8.4g
4回目 12g 7.5g
5回目 12g 7.5g
そして塩は、

2~4回目 2g
5回目 1g

です。

最初は「砂糖をどこまで減らせるか」という実験でした。

ところが続けているうちに、

砂糖だけを見ていてもダメなんだ

ということも分かってきました。

砂糖を減らす。

すると塩が気になる。

塩を減らす。

すると今度は、味をどう作るかを考えるようになります。

そこで5回目には、カモミールとオールスパイスをほんの少し加えてみました。

甘さや塩味を強くするのではなく、香りを使って味を作れないだろうか。

実験が少しずつ変わってきました。

でも、一番変わったのは数字ではありませんでした
最初は砂糖20gでした。

それを15gにして、12gにしました。

普通なら、

「砂糖を減らしたから物足りないな」

となりそうです。

ところが、あまりそう思わなかったんです。

むしろ、「12gでもいいな」と思いました。

そして、その次に出てきたのが、「そもそも、砂糖ってこんなに必要だったのかな?」という疑問でした。

「おいしい」と「食べ慣れている」は同じなのかな?
自分で作っていますから、

「今日は20g」

「今度は15g」

「今回は12g」

と全部分かったうえで食べています。

だから比較できます。

でも、もし最初から市販のクッキーだけを食べていたらどうでしょう。

袋を開けて食べて、「クッキーとはこういう甘さなんだ」と思っていたかもしれません。

甘いものを繰り返し食べれば、その甘さに慣れます。

濃い味を繰り返し食べれば、その濃さに慣れます。

すると、そこから少し薄くしたものを食べたとき、

「甘くない」

「何か物足りない」

と感じるかもしれません。

でも、それは本当に、

「おいしくない」のでしょうか。

 


それとも、「いつも食べている味と違う」だけなのでしょうか。

20g、15g、12gと自分で変えて食べたことで、そこが分からなくなってきました。

南米が変えようとしているのは「味の当たり前」なのかもしれません
南米の食品規制を最初に調べたとき、かなり強い規制だなと思いました。

商品の前面に、「糖類過剰」「ナトリウム過剰」「飽和脂肪過剰」などと大きく表示する。

国によっては、子ども向け広告や学校での販売にも制限があります。

でも今回、自分で砂糖や塩を減らしながらクッキーを作ってみて、少し違って見えるようになりました。

もしかすると変えようとしているのは、砂糖そのものだけではないのかもしれません。

「これくらい甘いのが普通」

「これくらい味が濃いのが普通」

という私たちの感覚そのものを、少しずつ変えようとしているのではないか。

そんなふうにも思えてきました。

習慣で「普通」になったなら、また変えることもできる

 


もちろん、「砂糖を食べたら病気になる」という単純な話ではありません。

でも、糖分や塩分、脂質、総エネルギーの多い食生活が長く続けば、肥満や2型糖尿病、高血圧、心血管疾患などのリスクと関係してきます。

だから病気になってから、「砂糖を減らしてください」「塩を減らしてください」と言うだけではなく、そのもっと前に、

「普通の甘さって、本当にこのくらい必要なの?」と考えてみる。

南米の食品規制には、そんな意味もあるのかもしれません。

そして今回の実験で感じたのは、

習慣によって作られた「普通の味」なら、習慣によってまた変えることもできるのではないか

ということでした。

20gから12gへ。そして今度は塩も半分に
最初は砂糖20g。


5回目は12g。

砂糖を8g減らしました。

そして5回目では、塩も2gから1gに減らしました。

ものすごい実験をしたわけではありません。

クッキーを5回作っただけです。

でも不思議なことに、「もっと砂糖が欲しい」ではなく、「まだ違う方法があるんじゃない?」と思うようになりました。

砂糖を増やすのではなく、香りを使ってみる。

塩を増やすのではなく、カモミールやオールスパイスをほんの少し使ってみる。

そう考えると、これは単なる「砂糖を減らす実験」ではなくなってきました。

当たり前だと思っていた味は、本当に必要な味なのか。

それとも、いつの間にか食べ慣れてしまった味なのか。

そして、砂糖や塩を減らした分を、別の味の作り方で補うことはできないのか。

南米の食品規制を調べ始めたときには、まさかこんなところまで来るとは思っていませんでした(笑)。

なので、この実験。

まだ続けてみようと思います。

2026年09月02日